先日、名古屋市の中心部のホテルで、私が所属している詩吟の流派のパーティが行われました。

 

名古屋のホテル

 

私は、10年ほど前から詩吟を嗜(たしな)んでいます。

私が詩吟を始めた理由は、次のようなことです。

1、古くから伝わっている’漢詩’を学び鑑賞できること。

2、吟を通して、腹式呼吸や声の出し方などを学べること。

3、詩吟の会を通して、様々な人との交流ができること。

などです。

詩吟のことをあまりご存じない方に、少し詩吟というものを、説明させていただきます。

【補足説明】

 漢詩の作者として、李白、杜甫、白楽天、など、唐の時代の詩人が有名ですが、陶淵明は彼らより、300年ほど昔の人です。
 日本では、明治時代の夏目漱石なども、漢詩を作っています。
 漢文を返り点、振り仮名、送り仮名などの訓点にしたがって、日本語に直した文章のことを、読み下し文と言います。
 この漢詩の読み下し文に、節回しを付けて、漢詩を吟じる技芸を詩吟といいます。
 ただ、詩吟は、民謡のような歌とは違います。

 

現在、私が所属している流派の会員数は、数百人(実質、400人程度)にのぼります。

その平均年齢は、何と80歳なのです。

その中で、私は69歳なのですが、私より年齢が若い人数は、おそらく数%だと思います。

パーティの円形テーブルに座った8人で、自分以外ほとんどの方が80歳を越えていました。

私が、「来月(8月)、70歳になります。」と話をすると、「若いねえ。」と皆さんがおっしゃいます。

そして、86際のご婦人が、「私は、86歳です。」と、おっしゃると、周りの方たちは、別の意味で、「若いねえ。」(そのようなお年に見えません。)とおしゃいました。

皆さん、詩吟という趣味を楽しんでおられるためか、生き生きとしておられて、同じ年齢の方より、かなり若く見えます。

しかしながら、このまま、5年10年経ったら、平均年齢はますます上がっていき、このようなパーティが、おそらくできなくなるのでは、と思われます。

その理由は、若い人たちの入会が、あまり期待できないからです。

この詩吟の流派には、組織上の問題があります。

詩吟は、茶道や生け花などと同じ’家元制度’によって、伝承されています。

この家元制度という仕組みは、21世紀、令和という時代には、少し時代遅れと言ってもよいかもしれません。

実は、若い世代が入ってこない理由の一つが、家元制度だと私は思っています。

私自身は、新しい会員を増やす方法として、ホームページや、Facebook などのSNSを、活用したらよいと思っています。

ホームページやSNSを使って、一般の人たちに、自分たちの流派の存在、練習場所と練習時間、そして詩吟のお手本の録音などを、公開して発信したらよいと、以前から思っています。

しかしながら、組織のトップである‘宗家先生’には、IT が分からないために、ホームページや、SNS などが、会員を集めるのに効果があるということを、どうしても理解できないのです。

ということは、これからも、詩吟の会員の集客が、上手くいかないということになります。

会員の年齢の問題、組織の硬直した体制などの理由から、この流派は衰退への道を辿らざるをえないと、私には思えるのです。

ただ、不思議なことに、多くの会員はそのことを、心配しているようには見えません。

 

私は、会員の方たちが、心から詩吟を楽しんでいて、今、自分が詩吟を楽しむことができれば、それ以上のことは、望んでおられないからだと思います。

その意味で、会員の皆さんは、今という瞬間に、生きておられるといえます。

最後に、皆さんの今後のご活躍、ご健康、お幸せを、祈念させていただきます。   (黒川 記)