八正道とは、今から約2,600年前に、お釈迦様が菩提樹の下で、お悟りになったときの、悟りに至るための行動規範です。
高橋信次先生
正しく見、正しく思い、正しく語り、正しく仕事をなし、正しく生活し、正しく道に精進し、正しく念じ、正しく定に入る」という八つの行動規範を、八正道といいます。
 
今回は、この八正道について、高橋信次先生のご著書「反省のかなめ 心と行い浄化する光明への道」の内容を元にして、整理させていただきました。
1、八正道の目的
 八正道の目的は、正法の精神である慈悲の心、愛の行為、中道の心を養うことです。
 苦集滅道(苦諦、集諦、滅諦、道諦の四諦)について
 苦=迷い。生老病死(しょうろうびょうし)の四苦。
   生きる苦しみ、老いる苦しみ、病気の苦しみ、死ぬ苦しみ。
 集=迷いの原因。五官・五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)から生じる煩悩。
   六根とは、五官(五感)と、意を合わせて、煩悩の原因を作り出す原因をいう。
   ※ お遍路さんが唱える「六根清浄」とは、六根を清浄にすることを指す。
 滅=六根を取り除く見方。六根の基づく考え方を正し、矯正すること。
 道=不動心を養う道。悟りを得る道は、八正道を行うこと。
2、八正道
 八正道を実践するために、その一つ一つの規範の目的を理解して、それに適う努力、勇気、工夫が必要です。
 (1) 正見(正しく見る)
 目的=物事に対する正確な判断、見解を得ることです。
 a. そのために、起きてくる出来事のすべての原因は、人の想念(心と意)にあり、この世界で起きたことは、その結果であることを、まず理解してください。
 b. 既成観念(常識や固定概念)をいったん白紙に戻して、物事の本当の姿を知るようにしてください。
 c. 正見の反対は、邪見です。邪見は邪心から生じるので、まず心のわだかまりを除いて、常に善意の第三者の立場で、物事を見ることが、正見の秘訣です。
 正見の秘訣は、八正道のそれぞれすべての規範に当てはまる秘訣です。
 (2) 正思(正しく思う)
 目的=思うことは、物事の始まりです。思考は現象化します。
 あらゆる出来事は思うことから始まるので、他を生かす愛の思いが、正思の根底になければなりません。
 正思は、八正道の規範の中でも、特に重要です。
 (3) 正語(正しく語る)
 目的=思うことは、言葉となります。愛の言葉は、愛の言葉となります。
 正語とは、愛の言葉を語ることです。
 心に愛があれば、言葉以前の言葉が伝わり、相手に正しく伝わります。
 (4) 正業(正しく仕事をする)
  ※ 業とはカルマのことですが、この業は、仕事の意味でもあります。
 目的=(a) 魂の修行。転生輪廻を繰り返すことで、カルマを修正します。
    (b) 地上界、この世界の調和。職業に就いて、仕事をすることで、世の役に立つ。
    (c) 調和の基礎は、感謝の心と、奉仕する行い。(人々に奉仕すること)
 (5) 正命(正しく生活する)
 目的=調和のとれた精神的、肉体的生活をすることです。
 それには、自分の長所、欠点をよく知り、カルマ(悪い癖)となっているエゴ(自分中心の考え・想念)を正していく努力が必要になります。
 (6) 正精進(正しく精進する)
 目的=人間関係が調和するように行動します。
 夫婦、親子、兄弟、友人、隣人、および、社会において、全ての人間関係は、愛の理念で成り立っています。
 (7) 正念(正しく念じる)
 目的=念はエネルギーです。ものを作り出すことができます。
 この世界では、あらゆる物事の原因の大元です。
 念は目的意識です。そのため、行為・行動を意味します。
 他を生かそうとする慈悲と愛の念、それ以外の念は、カルマ(悪い性癖)を育てる温床になります。
 邪念と対比して考えると、正念の意味がよりはっきりします。
 (8) 正定(正しく禅定する)
 目的=反省をすることで、心が安定し、やがて不動心が養われてきます。その不動心を日常生活に生かせるようになってこそ、正定は大きな意味があります。
 正定は、あの世の世界と、この世の最も身近な交流の場です。
 正定には、様々なレベルがありますが、要は、心の調和と安定、そして、智慧を生み出すことが、正定の目的です。
3、八正道の精神

 (1) 中道 - 左右に偏らない調和の心
 (2) 慈悲 - 生命を生かし続ける神の心
 (3)愛 - 他を生かす、助け合い、補い合い、許す行為。
 これを要約すると、一、神の心、一、正しい循環、一、慈悲と愛ということになります。

4、八正道の現実的な活かし方
 (1)  冷静 - いつも善意の第三者の立場で、物事を見ます。(正見)
 (2)  親切 - 愛の心で思い、念じ、語り、自己中心の立場を離れることです。(正思、正語、正念)
 (3) 感謝、報恩 - 人々の協力で、社会も個人も成り立っていることを知り、奉仕と協調の心を忘れないようにします。(正業)
 (4) カルマの修正 - 長所を伸ばし、短所を修正し、人々と手を取り合って生きます。(正命、正精進)
 (5) 反省 - 魂の前進は、正法という正しい循環にあるのですから、中道の尺度で一日の言動、心の動きを反省して、想念の浄化・修正の努力を続けます。
 反省後の瞑想は、心と肉体のバイブレーション(波動)が神に近づき、晴れ晴れとした気持ちになります。
 その気持ちで一日の生活を送ることが重要です。(正定)
 
以上が、信次先生の「反省のかなめ」に基づく、八正道についての解説となります。
 

現代仏教の「四諦八正道」の思想とは、少し趣が異なるところがあるかもしれません。

この八正道の解説は、古代インドの衆生に、お釈迦様が説かれた教えの原点に立ち返って、現代社会の日常生活の規範として、活用できるように、再構成したものです。
私は、この八正道を、信次先生と出会った20代に、知ることができました。
八正道という言葉は、高校の倫理社会の時間に、言葉としては、学んだ記憶がありました。
それ以来、今に至るまでの45年間、人生の行動指針として、いつも念頭にあります。
八正道を哲学として、とらえるのではなく、日常生活のツールとして、使っていただければ幸いです。
この八正道を、人生の規範として、実生活に取り入れて、「正法の生活」に入っていかれることを、お薦めいたします。